消失

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 職員室を通過した僕は廊下に立って、軽く辺りを見回した。  すると目的地である保健室はすぐに分かった。僕に勉強を教えてくれるだろう女性が立っていたからだ。  これで違ったらかなり恥ずかしいが、その時はこの女性に保健室の場所を聞けばいいだけだ。 「あの」  恐る恐る僕が声をかけるとその女性はこちらを向いた。しばらく僕の顔を認識するような目で見てから、 「あ、君が夏目君?」  そう綺麗な声でその人は僕の名前を呼んだ。年齢は二十歳程度であの道でぶつかった高校生の子が可愛いと言い表せるなら、この人は綺麗な人と言い表せるだろう。髪は胸のあたりまであり、顔立ちは大きな瞳とくっきりとした鼻、薄い唇。化粧はしているようで、見た目に気を使っているのだろうと推測できた。 「はい、そうです」  彼女の問いかけに僕は頷いた。その容姿にあった声を聴いて、電話の相手はこの人だと思った。
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