消失

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 僕は雑談と明日の日程を話してから先生と別れて下駄箱に向かおうとした。  不意に視線を感じて振り向くと、少し離れたところに、男子生徒が立っていた。その男子生徒は、じっと僕を見ていた。どうやら、まだ僕の顔を認識できていないようだった。  彼は誰だろうかと考えていると、男子生徒が歩み寄ってきて、僕を殴った。正確に言えば、頬に衝撃が走っただけで頬に痛みが走るまで、殴られたとは思わなかったのだが。  僕はそのまま呆気なく、尻餅をついてしまう。このような光景を前にも見たような気がするが、あの時とはまた状況が違った。  男子生徒は僕をあたかも蔑むようにみると、その場から立ち去った。一体、僕が何をしたというのだろう。僕が頬の痛みとあまりの突然の出来事に混乱してしばらく呆けた後、声が聞こえた。 「大丈夫っすか?」  特徴のある口調と明るめの声。すぐさま僕はこの間ぶつかった人だ、と思った。ズボンについた埃を払いながら、立ち上がり振り向いた僕は「はい」とだけ言った。あまり余計なことを言って、面倒事に発展させたくないからだった。 「あ、この前の……」 「あ、その節はどうも」  僕は小さく微笑み、そうしてあたかも知り合いのように普通に挨拶を交わしたが、世界って案外狭いのかもしれないと僕はひそかに思ってしまった。
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