消失

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「僕は夏目遥。同じ二年生だよ」 「よろしくっすね!」  僕はほとんど勢いで頷いた。勝手に友達申請されているが、毎回言葉の色が『オレンジ』であることから彼女は良い人だと推定は出来る。  あくまでも、彼女とは二回しか会ったことがないからまだ分からないが。 「にしても、なんかしらの縁っすかね? こうして会うのは」  言葉の色が複雑化したのを僕は、見逃さなかった。人の本音や感情は、単色では表せないことがある。  例えば今の彼女の発言では、元の色である『オレンジ』が少し黒ずんだ。これは、何かしらの悲しみ、憎しみ、少しの嘘などの負の感情が、混ざっていることがある。  そこまで思考を進めてから気づいた。『何かしらの縁』と彼女は言った。だがそれが悲しみや憎しみとは、考えにくいから、彼女の言葉が嘘かもしれない。だたとしたら、僕は意図的に彼女と出会っていることになる。つまり僕は監視されているということになるのだろうか。  いや、だけれども彼女とは、初対面であるはずだ。  けれども記憶を失う前の僕と何かしら接点があったと考えれば、辻褄(つじつま)は合う。だが、記憶を失った後の僕からしてみれば、どうも納得がいかない。  けれども、それが一番現実的な理由だった。
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