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少し疲れた僕は児童養護施設の自室のベッドに倒れこむとため息をついた。
当然、頭の中に居座るのは影井奏楽という人物と稲岡と言う人物についての考えだ。それを考えるにはあまりにも情報が少ないし学校で考えていたことが一番しっくりくる。
僕は一階に降りてからリビングに向かうと岸先生がいた。今日の話は別にしなくていいだろうという判断で彼の前の椅子に座り昼間の三十分ほどのニュースを見ていた。
『次のニュースです。交通事故で軽自動車にはねられた小学五年生の男児が__』
「交通事故ですか」
テレビを見ながら僕は呟く。岸先生が「そうだね」と短く言って、ふうとため息に似た息を吐き出した。そうして小首を傾げ、僕のほうを見るとこう問うた。
「記憶は思い出せたのかい?」
「いえ」
交通事故と聞いて前々から気になっていたが、岸先生に問うても意味のないことを口にした。
「僕の交通事故の犯人は誰でしょうね」
岸先生は僕のほうを向かずに短く「分からないよ」と苦笑いを浮かべてそう言った。
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