異変

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 僕が岸先生に投げかけた「交通事故の犯人は誰か」と言う問いに対して岸先生は「分からないなぁ」と答えた。  その時の彼の言葉の色は『黒』、それは完璧な嘘を表す。だから怖くなった僕は、すぐにリビングから出ていったのだ。  つまり岸先生は僕の交通事故の犯人を知っているということになる。  僕が思ったことは、彼が僕の両親が死亡し、僕の記憶を失わせた事故の犯人ではないかと言うことだ。  そこまで思い出してはっとした。  僕が児童養護施設に来た時に彼が内心で出迎えていなかった理由は、僕が交通事故での生き残りで、真相に気付かれたくなかった。そうだとすると、それなりに辻褄はあうし納得はいく。誰だって嘘は見抜かれたくないはずだから、そのきっかけを作るかもしれないと人物は歓迎はしないだろう。  そもそも交通事故とは飛行機、車、電車などの交通機関の事故だと何かで読んだが、僕の両親はどのようにして死んだのだろうか。  児童養護施設には駐車場はおろか車もないが岸先生の実家には、あるかもしれない。一番手っ取り早いのは、彼に直接聞くことなのだが、もし彼が犯人だとしたら気づかれる可能性がある。  だから、やめておくのが最善なのだろうが、そうしてしまうと調べる方法が潰えてしまう。危険を冒してまで先生に尋ねたほうがいいのだろうか。
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