異変

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 僕はゆっくりと顔を上げる。本来ならば迷惑をかけないために、誰にも相談しないほうがいいのだろうが、今の僕は奏楽さんと岸先生の件があって憔悴(しょうすい)しきっていた。  話を聞いてくれるだけでいい、だから誰かにこのことを話したい。だが児童養護施設の子供は、すぐ岸先生に話しそうで信用できない。  これは完全に孤立したような気がしてならないけれど信用できる人物と考えて少し心当たりができた。  曽村先生。  あの教師ならば奏楽さんや岸先生とも関わりがないから、とりあえず話はできるだろう。明日もう一度学校に行ってみていたら話してみるか。彼女がいる教室に居なくても、職員室に聞いてみれば分かるだろう。  自分を落ち着かせるためにゆっくりと呼吸をした。明日は昼間に外出しなくてはいけないが覚悟を決めよう。 「よし」  短く決意表明をした途端に、疲れが襲ってきた。僕は、そのままベッドに倒れこみ寝るつもりで横になった。  ややあって僕は起きてから小さく欠伸をして思考を振り返り、何てことを考えていたんだろうなぁ、とぼんやりと思った。  申し訳がないと思いながらも僕の中ではその考えが確信できるものへと変わっていた。
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