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僕の狭い世界には、頼れる人物なんかいない。彼女が最後の綱だったというのに。
少し気が緩めば力が抜けて座り込み、すぐさま泣き崩れるに違いない。独りになってしまったという心細い実感が押し寄せ、僕はよろめきつつ児童養護施設に戻ろうとした。けれど無性に怖くて戻れずに彷徨い続けた結果、公園でブランコに座っていた。
閑散とした公園は一人で考え事をするには、うってつけの場所だった。何となく、ブランコに座った。
岸先生のことを疑いすぎだろうか。冷静になって考え直すと、かなり失礼なことだと思った。
疑心暗鬼になりすぎたのだろうし、彼は単純に事故現場を目撃し、『犯人』を見ていたいただけではないだろうか。
そのうえで僕に気を使って言わないでおいたということも考えられる。だとしたら僕は今すぐに児童養護施設に戻って、岸先生に問い詰めたほうがいいだろうか。
だが、そうだとすると『犯人』がいたと警察に通報すればいいだろうし、そうしたら僕がここまで悩む必要はないだろう。
もしかしたら、『犯人』に脅されている? いや、そうだとしたらあの一連の会話で岸先生の回答が、単色で表せなくなるのだろうから、あり得ないだろう。
だとすると岸先生が『犯人』なのではないだろうか。
ここまで考えて、煮詰まった思考に嫌気が差した。気晴らしにブランコを漕いでみて何気なく思ったことがある。
__これ、普通に楽しい。
初めてそう思ったブランコからようやく降りた僕が来ていたのは図書館だった。図書館は確か新聞が借りられるはずだったから、交通事故に遭ったのは二か月ほど前の新聞を探せばいいだろう。
まず岸先生に聞くよりどのような事故だったかを調べなくてはならない。
図書館の中は暖房が利いていて温かく、眠ることに適していそうだった。僕は少し欠伸をしてからカーペットの床を一歩踏み出した。少し辺りを見回してから雑誌のコーナーがあるのでそこに向かった。
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