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今日は十二月二十一日だから、二か月前である十月ごろの新聞を片っ端から漁るという気力は必要な作業だった。
幸いなことに各月ごとにまとめられている。そのなかの“十月”とプレートに書いてあるところの新聞を数冊取り出して僕は開いている席に着いた。
新聞を捲っては戻す作業を何回か繰り返した後、僕は新聞の一頁に目を付けた。
『交通事故か』
これだろうか。交通事故と言う文字につられるようにして記事を読み進めていく。
『十月二十日未明、**県**市の国道で車が電柱に接触する事故が発生。この車に乗っていた市内病院の院長である夏目 晴彦(なつめ はるひこ)さんとその妻・貴美子(きみこ)さんが死亡しました。警察はこの事故はお二人の過失として__』
僕は目を見張り、一瞬にして思案し始めた。夏目晴彦と夏目貴美子は僕の両親なのは身元が判明したときに分かっている。間違いなくこれは僕が遭った交通事故の話だ。それにこの事故は過失だし、岸先生の関係性がないことは分かったから岸先生については安心して大丈夫だろう。
だとしたら岸先生が僕を気遣ってくれたっていう説のほうがより有力となるのだろうか。
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