異変

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 けれどもその疑問を否定するように、瞬時に違和感が頭を駆け抜けた。  この事故は僕の両親の過失であるからこそ『犯人は誰なんでしょうね』と言う僕の問いについて『分からない』と言う答えが黒ずんだのはなおさら変だ。  さっきも言った通りこの事故は、両親の過失であり『犯人』がいない事故なのに『犯人』がいるなんて証言はおかしいだろう。  念のため翌日のも見たのだが、事件性がない事故ということで報道はされていなかった。どのようにして、この事故に岸先生が関連しているのだろうか。警察の捜査が間違いだというわけでもなさそうだし__  どうすればいいのだろうか。  開始早々、詰んだのを実感しつつ、僕はため息をついて席から立ち上がった。新聞を戻して、児童養護施設に向かうべく図書館を後にした。暖かい場所だったからか体が少し火照っている。それでも思考はしっかりと働いているようで、ちゃんと先ほどのことを覚えていた。  まずは岸先生が、この交通事故にどう絡んでいるか。これから問いただそうとは思う。だが怖いものがある。第一、僕の能力に話したうえで彼に「どういうことですか」と問い詰めてみても、大掛かりな嘘だと思われ軽々しくあしらわれるのは目に見えている。
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