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翌日、僕は自室のドアをノックする音で目覚めた。問診か何かあったのかと身構えた僕は病院からはすでに退院していて、今は児童養護施設にいるのだと言うことに気づく。
どうやら短い間ながらも、病院での暮らしは身に染みているようだ。
もう一度ドアをノックする音で我に返り僕は急いでドアを開けた。そこに立っていたのは無表情の岸先生で、あまりにも意外な人物がいたことに驚きを感じながら彼を見ていると、唐突にこう言ったのだ。
「君の身元が分かったよ」
その言葉にこの時期特有の寒さではなく、本能的に体が凍りつくのが僕には分かった。まさか朝一番でこんなとんでもない報告を受けるとは思わなかったからだろう。
理性と感情が現実に追い付いていないのを肌で感じていた。
先生の言葉の色は当然のように真実を表す『白』で、嘘はついていない。僕は自分でも言い表せない感情に飲み込まれ、思わず寝るときに着ていた寝間着のズボンを握りしめた。
そんな混乱している僕に、岸先生は何も言わなかった。それにより気まずい沈黙が続いた。何か返事をしなければいけないと、とにかく声を発した。
「……そうですか」
言葉は普通であっても、その声は自分でも驚くくらいに小さく、そして震えていた。
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