第1章:四葉出版社へ

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第1章:四葉出版社へ

いよいよ、今日が四つ葉出版社への勤務初日だ。 私はクローゼットから洋服をいくつか取り出して、鏡の前でコーディネートを考えた。 四つ葉出版社で配属されるのは総務課だから、オフィスカジュアルがメインになる。  (無難にカッチリとしたスーツにするか、ジャケットとスカートを組み合わせみようか…) 勤務初日だし周りの服装とかまだ分からないので今日は様子見としてグレーのスーツにしていこうと決め、スーツに着替えると、バックに必要な物を入れて肩にかけて玄関に向かう。 「これで、いいかな」 玄関にある靴を入れている棚からスーツに合う黒のパンプスを取り出して、ヒールの低い物を履く。 自分の身長が170を超えているし、これ以上デカイと思われたくないので自然と靴はヒールの低い物を買うようになっていた。  (色気のない靴ばかり…) "おしゃれは足もとから"というけれど、どの靴を見てもヒールが高い靴はなくて、"女子力"というスキルはかなり遠ざかっているような気がしている。 「駅に行かなくちゃ」 私は少し息を吐いて気持ちを切り替え、玄関のドアを開けて駅へ向かう。 天気は生憎の曇り空で晴れていれば多少気分もいいけれど、何となく曇り空と同じように気分はどんよりするから、こういう時は音楽を聴くことをしている。 私は右手でバックに入れている音楽プレイヤーを取り出して、耳にイヤホンをつけて電源を入れると、指でボタンを操作して楽曲を選んだ。 耳に聴こえるのは、自分を応援してくれるような歌詞や、好きになった人への片想いをしている歌詞が多い。 特に片想い系は、歌詞に出てくる女性と自分をシンクロさせて、その世界観にどっぷりと浸かる。 そうすると、自分の恋愛もこうだったらいいなぁとか、勝手に妄想してるとあっという間に駅に着くことが出来る。
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