6人が本棚に入れています
本棚に追加
恐怖か絶望か、それとも両方か分からないが、「彼」は顔面蒼白な顔をしてモゴモゴと何かを呟いている。
それは本当に本当に小さな声で、彼の今の心理状態を表しているに違いない。
「これは夢だ、幻想だ。こんな世界あるはずがない」
「何だよ異世界って………何なんだよ一体」
「カエリタイ、カエリタイよ………」
「俺が昔こんな世界に憧れていたから、きっと神様が夢の中で見せているに違いない」
「なら少し経てば夢から覚める。もう少しで現実に戻れる」
「それまでの辛抱だ。耐えろ、耐えろ、耐えろたえろたえろたえろたえろたえろたえろたえろたえろ………俺は帰れる」
「彼」は行く宛ても無いまま少しずつ歩き始める。
まるでそこに住み憑く亡霊であるかのようにフラフラと、四方八方へと歩き回る。
「彼」の意識はもうそこには無くなってしまっている。
最初のコメントを投稿しよう!