第1章

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 窓に手をかけ庭を眺めながら文月は今更ながら広いなぁと思う。  きょろきょろと外を見回す文月の仕草が可愛らしくてタルドレムは声をかけようかかけまいか迷う。  が、すぐに馬車からは降りるのだ。文月のこんな姿を見られるのは自分の特権だと思い微笑ましい気持ちで文月を眺めていた。  しばらくすると前方からガラガラと大きな音が響き、跳ね橋が向こう側へ倒れてゆくのが見えた。  がったんがったんと跳ね橋の上を渡りきったところでタルドレムは馬車を止める。  先に自分が降りて文月に手を差し伸べた。 「大丈夫だ、ゆっくりおいで」  別にびびっているわけではないが文月はタルドレムの手をとりそおっと馬車から降りる。  片手でタルドレムの手を取り片手でスカートをちょっと持ち上げてすそを踏まないようにした。  スカートめんどくさー。  のどかな田園風景が広がっていた。  振り返ればラスクニア城の後ろには山が聳えていた。山は切り立っており天然の城壁にもなっているのだろう。  その険しい山の中腹辺りに鳥が飛んでおり、ゆっくり動いている雲が時折その姿を隠したりしていた。 「がっははは!よう王子!女連れで弓が引けんのかい!」  跳ね橋を10人程の男たちが渡ってきた。  いずれも同じ弓矢に剣、制服を身に着けており、軍か警備の人たちだろうなと文月は予想をつける。 「無礼な口は無し。俺の后候補ですよ」 「がっははは!あんたがそうか!俺は三番隊、隊長のペギルトスだ!よろしくな!」  先頭を歩いてきた屈強な男が自己紹介した。見るからに歴戦の兵士といった印象を受ける。髪は短く刈り込んでおり他の兵士達よりも大きな弓を持っていた。 「俺の弓の教師でさ。幼い頃から仕込まれたもんだから今でも頭が上がらないんだ。口が悪いけど勘弁してやって」 「がっははは!俺はいつでも礼儀正しいだろうが!なぁ?」  ペギルトスは振り返って隊員達に同意を促すが全員笑いながら首を横に振った。 「がっははは!まあそういうこった!」  どういうこった。 「あはは。初めまして文月です。よろしくお願いします」  とりあえず文月は頭を下げて自己紹介する。  文月の可憐さに隊員達からほぉ…とため息が漏れる。12人に見られて、もじっとする仕草が隊員達の庇護欲をさらにくすぐる。
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