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「がっははは!弓引きが射抜かれるなんて笑い話にもならねぇ!おいやるぞ!」
隊長の一声に全員がきっちり気持ちを切り替えすぐさま陣形をとった。
ペギルトスが矢をつがえて止め、タルドレムの方に顔だけ向けた。
「がっははは!そうだ王子!一番弓を引かせてやるぜ!」
「いや、いいよ」
「がっははは!姫さんの前だ!いいとこ見せてやんな!」
見ると隊員達も弓を下に向け王子に出番を譲るつもりのようだ。
「がっははは!姫さんも王子に何か言ってやんな!こういうときの一言は効くぜ!」
何がどう効くのか分からないがペギルトスのでかい声に押されて文月はタルドレムに声をかける。
「えーっと……頑張って?」
文月が胸の前でグーをつくりぐっと握りこむと隊員達から、わっと声が上がる。
タルドレムは苦笑しながら弓を持つ。すぐにリグロルがやってきて文月の手をとり後ろに下がらせた。
「流石にまだ届かないよ」
「がっははは!まだまだだな!見てな!」
そう言ってペギルトスは弓をつがえて山の方に向けた。
矢が飛ぶであろう方向を文月も自然と見る。
先ほど山の中腹を飛んでいた鳥達が近づいてきており、どうやらペギルトスはその鳥達を狙っているようだ。
え?鳥?
文月が先程鳥だと思っていたものはなにやら鳥とは言いがたいシルエットをしていた。
まるで太い蛇に翼が生えたような姿をしている。
「あれがワイバーン?」
「そうです。今回は中型よりも少し小さめですね」
文月の疑問に隣のリグロルが答えてくれた。
ペギルトスは弓を引き絞る。腕と胸の筋肉が盛り上がり弦がびきびきと音を立てる。
しかし獲物の形状が辛うじて認識できるようなこの遠距離で弓という武器がどれほど有効なのか。文月がそんな事を思ったとき。
ドン!
重低音の発射音を響かせペギルトスが矢を放った。文月はその音にびくっと体を震わせ思わずリグロルにつかまる。
間があり一匹のワイバーンが落ちるのが見えた。遠くなので落下速度も遅く感じる。
ギャーという断末魔が更に遅れて小さく聞こえた。
弓じゃなくて対空兵器だよ、と文月は感心するより呆れた。
ペギルトスの一撃でこちらを敵と認識したらしく残りの5匹のワイバーンが雄叫びを上げながら向かってきた。
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