第1章

5/7

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「がっははは!こうだ!さあ撃て!」 「まだ遠いって」  ペギルトスが打ち落とした距離から半分ほどの距離になったときにようやくタルドレムが弓を構えた。  その姿は……あらま意外とたくましい。  ビュン!  こちらは常識的な音を響かせて弓矢を飛ばした。  タルドレムの矢もワイバーンに当たった。が、当たった個体はガクンと一瞬落ちたがまだ辛うじて飛んでくる。 「がっははは!よし!王子の獲物以外は打ち落とせ!撃てえ!」  ペギルトスの号令と同時に隊員達が矢を放ちワイバーンの群れに突き刺さる。  叫びながら落ちてゆく4匹のワイバーン。  一瞬で残りはタルドレムがしとめ損ねた1匹になった。 「俺、格好悪くない?」 「がっははは!格好悪いな!」  文月はタルドレムがからかわれているみたいで面白くなくなった。  もともと誰かの失敗や不出来を笑いものに出来るような性格ではないのだ。  これがタルドレム以外の人が対象になっていてもやっぱり不愉快になっただろう。  先ほど自分の感情をきちんと受け止めてくれた人物がネタにされているのだ。  文月の顔が不機嫌になる。 「僕も撃つ。かして」  そう言って文月は返事も待たずに弓をリグロルの背中から外す。  リグロルは止めることはせず、矢筒から矢を取り出し文月に渡した。 「んー!」  文月は一生懸命弓を引く。女になって筋力が極端に落ちたらしく弦がすごく硬く感じる。  その姿に気がついた隊員達から失笑が漏れた。  そもそも弓の引き方も矢のつがえ方も狙いの定め方も構えも何も知らない文月にまともに出来るわけが無い。  リグロルが文月の背中に回り小声ですばやく的確にアドバイスをする。 「んっ!」  文月は思い切り弦を引き矢を放したが可愛らしい掛け声に合わせた様に、矢は数メートル先にポトンと落ちた。  隊員達からは暖かい声援や励ましの声が上がる。  文月の不機嫌度がさらに増した。 「フミツキ様。今の筋力では無理です。魔力を込めてください」 「どうやって?」 「糸を思い浮かべてください」 「糸?布を縫うときとかに使う糸?」 「そうです。魔力を糸だと思って矢に巻きつけてください。こうクルクルと」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加