第1章

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 矢が放たれる。文月の魔力が込められた矢がワイバーンに当たった瞬間、重低音と共にワイバーンに穴が開いた。穴から空が見える。  断末魔をあげることすら許されず、体の中心部分が消失したワイバーンはしなびた風船のようにぐだぐだになって地上へ落ちていった。 「がっははは!とんでもねぇ姫さんだな!」  ペギルトスの声をきっかけに隊員達から、うおぉと歓声が上がった。 「ニムテクから話は聞いていたけど実際見るとすごいね」 「流石はフミツキ様です」 「あは……あは……」  周囲は手放しで喜んでいるが文月はどうしても気になってしまうことがあった。  そんな文月の思案顔に気がついたリグロルが声をかける。 「フミツキ様、何かお気になることでもございますか?」 「あ…うん」 「魔力の使いすぎ……では、ございませんね」  文月は黙って指をさす。 「あれ、どうやって埋めよう……」  自分が開けてしまった大穴を気にしていた。 「がっははは!俺の隊で後始末はしておいてやるぜ!おい!半分は穴埋め、半分はワイバーンを剥ぎに行くぞ!」 「えっ?良いんですか?」 「がっははは!気にするな!面白いもんを見せてもらった代金だ!なぁ?」  えー、という不満声が隊員達から上がったが、上げただけで行動はすばやかった。  すぐに穴をふさぐ班とワイバーンの後始末の班に分かれて動き出した。 「剥ぐってなに?」 「魔物の体内には時々魔石が含まれていることがあるんだ。それを回収しに行くのさ」 「ふーん……僕も行ってみて良いかな?」 「構わないけど……あまり面白い光景ではないよ」 「そうなの?」 「首を切り落としたり、頭蓋骨割ったりするからね」 「うえぇ……」  ゲームのように死体は勝手に消えて宝箱が出現するというような事はないらしい。文月にグロ耐性は無い。ここはお姫様特権で辞退してもいいかも。 「やっぱりいいや……穴埋め手伝うよ」 「できること無いと思うよ」 「うぐっ……」  タルドレムの言うとおりである。そもそもドレスを着ているのに土木作業とか無理な話だ。 「それではフミツキ様一旦お部屋に戻りましょう」 「あー……うん……」  この場にいても出来ることはない。  文月が穴埋め班に近づきお詫びの言葉を述べると全員がいやいやいやと言いながらでれでれな表情をし作業スピードが上がった。
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