切なさは苦しみに似ている

10/40
前へ
/40ページ
次へ
  女も大概判らねえが、 自分がそうでありながら 男も相当難解だ。 粉々にぶっ壊したいのと、 ずぶずぶに甘やかしたいのと、 どっちも同時に やってしまいたくて仕方がねえ。 ……ガキの頃から。 ──甘やかすのはともかく、 壊す方はやった瞬間 俺もそうなるんだろうな、と思う。 自分が壊れるのは怖くないが、 俺はありのままの志緒が好きだ。 そしてたぶん、 大事なんだろうと思う。 代わりなんていねえ、と 思った瞬間泣きたくなる。 俺のことなんてどうだっていい。 だが、志緒だけは別なんだ。 その志緒が、 こうして抱き返してくれることで 同じ気持ちだと 伝えてくれるから── ああ、じゃあ俺も 自重しなくては、 なんて思えるんだ。 .
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1135人が本棚に入れています
本棚に追加