切なさは苦しみに似ている

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ ──俺はどうかしている。 マイクスタンドを掴んだまま、 強いライトに眩暈を覚えた。 生放送の音楽番組、 そこで与えられた時間内に パフォーマンスしたのは、 新曲と。 ……自分で 拙い作詞をしたままの デビュー曲の亜種。 こっそり冴とも打ち合わせして、 何とか自分の頭の中だけで 整えた詞だ。 芸術らしい含みなんて 何もない。 ただ言いたいことを 並べただけの、 拙くてこっ恥ずかしい歌。 局内のどこかで、 志緒が見ているのは知っている。 “いつか君が俺に望んでた  景色をまだ今でも見せたい  遠く遠くここまで来ていた  寒い夜を越えられなくて  眠れずにいた ひとりきり” .
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