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さらにびくんと
縮み上がった心臓が痛くて、
そらすと同時に彼女の視線から
逃れるために楽屋の隅まで
横歩きで移動する。
「ちょっと、
なんでそんな別人みたいな
反応するの」
上ずった志緒の声の中に、
彼女自身の羞恥心が
見え隠れしていた。
さっきのあの歌への羞恥なのか、
俺の羞恥が伝染ったのか、
今は区別がつかない。
「あんな歌聴かれたので──
とりあえずめちゃくちゃ恥ずかしい」
いつもの口調が迷子で、
どう話していいか判らねえ。
言い訳と説明を
たどたどしく繰り返しながら、
どうにも違う場所で
腹が立ってくる。
この女は一体どこまで
俺をひん剥いてしまうんだろう。
ガキの頃よりも
もっと素の自分が
曝け出されてしまって、
心も身体もひりひりと痛い。
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