切なさは苦しみに似ている

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  「……ふ、う」 ぴくりと身体を震わせ、 志緒の意識が 戻ってくるのが判った。 彼女に覆いかぶさり、 収めたまま俺も息をつく。 「大丈夫か」 「……ん。平気……」 俺がいつも理性を 吹っ飛ばしてしまうせいで、 彼女がこうして一瞬 どこかへ行ってしまうことがある。 はら……と涙をこぼした 志緒の目尻に口付けて嘗めながら、 ゆるく穿つ。 「ん……あ……」 激しい波にさらわれ、 戻ってきたばかりの志緒に 無茶をする気にはなれない。 が、彼女の中を揺蕩(たゆた)うのも 無体なことだと思いつつ やめられなくて。 わずかに息を乱す 彼女の白くなめらかな頬を、 指先で往復するようになぞった。 .
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