サイキック・バレンタイン・ラプソディ

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【サイキック・バレンタイン・ラプソディ】 「出来た?!」 「出来たわ!」 「うん、完璧な仕上がりね」    それぞれの家のキッチンで、三人の女子高生が、あちこちをチョコまみれにしながら、にんまりと満足げに自分の創作物を眺めている。  明日はセント・バレンタインデー。  1年で、もっとも女の子達がアグレッシブになり、行動する日。そして男の子達が、とっても複雑な想いに駆られ、そわそわする日。  神楽、美瑠羅、早苗。  3人娘はそれぞれ、出来上がった手作りチョコを箱に詰め、綺麗にラッピングをして明日の準備を終わらせた。  本命の他に、今回はいつもお世話になっているクリエイターの皆さんにも、という太っ腹な3人娘。  自慢の超能力を駆使して造ったチョコは、意外にも普通な感じな物だった……  翌日。2月14日。3人娘はそれぞれの既製品の義理チョコをイ○ンの紙袋に詰め込み、本命用を大切に抱え、それぞれの家を出発した。まずはお礼の義理チョコだ。  街のメインストリートまでやって来た。道路脇の市民公園に、お目当てのクリエイターさんの集団を発見した3人娘が、公園前で鉢合わせになった。 「あれえ?」 「せんぱ?い!」 「あなた達……」  それぞれが手にしたチョコの箱を見て、ライバル心を燃え上がらせる。 《むむむ、なかなかやるじゃない。けど、中身が問題よ》 「あの?」  ベンチに腰をかけている黒髪の青年に神楽は声を掛けた。 「何ですか?」 「ハイ、その、実……」 「キャーッ、○○さん、××さん、□□さん……」  突如現れた女子の大群に言葉が掻き消され、神楽、美瑠羅、早苗の3人は人の波に呑まれていた。  手にした箱と袋がぶつかった勢いで宙を舞い、3つの包みが空中ですれ違う。袋の中身が辺り一面にばら撒かれる結果になった。 「いやーん!」  群がるモブの女子達の中で、神楽達はパニックを起こしかける。3人娘は衝動的に能力を発動させていた。  自分がどの能力を行使したのかさえ、解っていなかった。  空中に舞い上がった大量の義理チョコがパン、パン、パパンと音を立てて弾けていく。大切なラッピングバージョンの箱が空中に停滞し、それがゆっくりと回転しながら徐々に降下してくる。  モブ女達の動きが緩慢になり、その合間を縫うようにして神楽達は移動した。 「やった、本命チョコ、キャッチ!」
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