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清々しく晴れたある日の午後、貴女は事務所の会議室に呼び出されていた。
どうやら仕事のオファーらしいがいったい何の仕事なのか詳細は何も聞かせれておらず、不安に思いながらも会議室の扉をノックし、おずおずと中を覗き込むように足を踏み入れる。
「…おお、来たか」
「なにやってるの、早く座って。話が進まないから」
「あれ、龍也さんに…藍ちゃん?」
中に入ってみれば珍しい組み合わせに目を丸くし、ますます自分が呼ばれた理由が分からず首を傾げるも、藍に促されるまま用意された椅子に座る。
「急に呼び出して悪かったな。美風が駄々こねてしょーがねぇからお前を呼んだんだ」
「駄々って…僕は子供じゃないよ」
「15歳は立派なガキだよ。ほら、無駄話はここまでにして始めるぞ」
子供扱いする龍也に拗ねたように反論する藍を龍也が一蹴すれば、このままでは貴女の頭上にハテナが増えるだけなので本題に入ると言って仕事の表情に戻る。
藍も仕方なく仕事に戻ることにして貴女に資料を渡す。
「実は美風の新曲が決まったんだが、今回のPVはドラマ仕様にするつもりでな。美風と一緒に出演するパートナーが必要になったんだが、こいつがどうしてもお前じゃなきゃ嫌だって言って聞きやしねぇんだ」
貴女に資料が渡ったのを確認した龍也が進行を始めるも、苦虫を噛み潰したような表情で藍の駄々に困っていることを説明する。
貴女も龍也の話にようやく自分が呼ばれた理由に見当がつけば龍也に向けていた視線を資料へと移す。
「別に私的な理由だけで君を指定した訳じゃないよ。僕と比較した場合の身体的バランス、演技力、表現力を計算して総合的に判断した結果、彼女が一番いいと思ったんだよ」
藍の言葉は理論的ながらも貴女にしてみれば褒めちぎられているような気がしてだんだんと恥ずかしくなっていき、まともに藍の顔が見れないと思えば資料に落とした視線が上げられなくなってしまっていた。
「……というわけなんだが、やってくれるか?俺としても美風の希望は聞いてやりたい。今後のスケジュールのこともあるだろうが、お前がこの話を受けるならスケジュールはこっちでなんとかしてやる」
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