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ー次の日ー
「え、なにこれ」
「どう?素敵でしょ?」
母が連れてきたのはお世辞にも綺麗とは言えないツタが生え雑草が生い茂ったどんよりとした雰囲気をかもしだす大きな家だった。
作りは洋風なのだが、どうみても薄気味悪い家だ。
家賃が安いのにも納得できる。
「とりあえず中に入りましょ」
母が大家さんから預かった鍵でその家の扉をあけた。
この時から私は少し疑問に思っていた。
(なんで大家さんは一緒にこなかったんだろう?)
普通だったら大家さんや不動産屋が付いてくるはずだ。
それがなぜ…?
私は考えながら母の後に続いて玄関に入った。
お風呂場、和室、洋室、トイレ…
順々にいろんな部屋を見て回る。
一通り周り終えた私は入ってきたときから嫌な予感がしていたので玄関に戻った。
母は一人で嬉しそうにいろんな場所を見ている。
(早く終わらないかなぁ…)
そんなことを思い目を閉じたその時。
「ぐぇっ」
耳元でヒキガエルを潰したような声が聞こえた。
「!?」
びくりと肩を震わす。
「お母さん…?」
いや、違う。だってあんなに離れているのに…
こんなところに一瞬できて一瞬で逃げれるわけ…
「きゃぁぁぁあ!?」
母の悲鳴が聞こえる。
「お母さん!?」
私は急いで母の元へ駆けつけた。
母は和室で口に手を当て立ち尽くしていた。
「どうしたの!?」
「く…くも…が…」
蜘蛛?
なんだ、蜘蛛か。そういえばお母さんは蜘蛛、嫌いだったな。
そんな小さい蜘蛛で驚かなくても…
ちらりと母の視線を追って私は驚愕した。
人間の手のひらの一回りも大きいその蜘蛛はこちらをじっと見つめていた。
……まるで獲物を狙うかのように。
この家に近づくなと言わんばかりに。
おかしい。この家はなにかがおかしい…!
「お母さん!」
私は母の手を引きその家から逃げた。
後に聞いた話によるとその家では昔殺人事件があったそうだ。
殺されたこの家の本当の持ち主は一匹の蜘蛛と一匹のヒキガエルを大切に大切に育てていたと不動産屋は語った。
あの蜘蛛は家を守っていたのかもしれない。
あの家は相変わらず誰も住まず今もあの場所にある。
そういえば、私ずっと気になってたんだけど…
あの時の不動産屋さんのあのセリフはどう言う意味だろう?
「あれ?あの家、貸し出しにしてないはずなのにな…」
みなさんも誰も住まない家にはご注意を。
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