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 結局の所、一座を信頼する根拠が無い、と頑なに娘から手を引けと言い張る師に対し、 「まーまー。ここはお酒でも飲んで、腹を割って話し合いましょー」  そんなことを言い出した黒い女が、本当に熱燗を用意させた。一度飲んでしまうと、それだけでは物足りなくなったといい、勢いで決まった現在の状況だった。 「……で……」  そして少年はその後、スカウトの話の続きなど全く出ない、わけのわからない現状に首を傾げる。 「あんたら……何しにここに来たんだ?」  既に場は、酔った師の娘語りと、黒髪の花形の愚痴に占められていた。 「大体ねぇ、内回りがある時くらいは、外回りを少なくしたらいいのに。こんな夜まで働いた後で、内回りの練習もしろって、鬼でしょう、鬼! 私は癒しが欲しいの、可愛い癒しが!」 「違ぇねぇ。そりゃー花形さんも大変だな。うちの娘は確実に癒しになるけど、あのもう一人の花形さんじゃ駄目なのか?」 「あのコは完全、男性向けなの! 可愛いから許される的な、そんなお姫様はお呼びじゃないの! せめてもう少しだけでも、営業や調整を手伝ってくれたらいいのに……」  どうやら花形の女同士は、少なくとも黒髪の方からは、複雑な思いがあるようだった。 「まぁまぁ。霖は芸事だけでなく、仕事もできる女性ですから」 「そんなこと言っても、私だってまだ十八だし……色々してたら、肝心の芸はルンには全然敵わないし。そもそも私、スカイはお色気担当なんて言うけど、絶対そんなキャラじゃないし……」  つまり確実に、未成年でかぱかぱと酒瓶をあけている黒髪の花形は、ケープの下の常に露出の多い恰好は本意ではないらしい。 「かと言って、小鳥ちゃんみたいに凛とした良さがあるわけじゃないし……わかってるのよ、私みたいに地味な女は、カラダを売りにするしかないってことは……」  段々と黒髪の花形の周囲の空気が重苦しくなる。そして更に、黒い女が面白げに場を煽る。 「霖。貴女から地味をとったら何が残るとゆーのです」
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