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「早いよね。もうユーオン君に会ってから季節が一つ過ぎて、年も明けたんだよね」 「寒くなったけど、ユオンのあの羽織物じゃ目立つと思うぞ。すみれさんが後で、出る前に自分の所に来いと言われていた」 「そうなのか? 何の用だろ?」  すっかり袴姿に慣れたが、袖がない黒衣を基本着とする少年は、寒さや暑さには鈍い方だ。それでも稀に外出する時や、冷え込んだ時は、少年達が初めて出会った時――少年が占い師を探して単独で遠出した時に羽織った、厚手のケープを身に着けていた。  今ではもう、養父母が帰るまでは御所にいてもいいか。そう思えて、家に帰る時まではと襖の奥にしまってあった。 「あれからは特に、変な人形が襲ってくることもなかったしな。本当、何だったんだろうな? あの人形達は」  その時に複数の人形に弟を集中して狙われ、苦戦することになった兄弟子は、今でもリベンジを目論んでいる様子だった。 「人形師が操ってるにしては、個々の動きが細か過ぎたし……それぞれの意志で、僕達を襲ったようにも見えましたよね」 「でも、死霊とかそういうのが憑いた人形でもないんだろ?」  それなら術師たる弟にはわかるはずだ、と兄弟子は両腕を組んで悩んでいる。 「兄様の言われる通り、死んだ人間という感じではなくて。依童――普通なら、霊を降ろすための人形ではあったけど」 「……」  その出会いの時は「銀色」が関わった時間が多い。今の金色の髪の少年は何も言えず、黙って成り行きを眺めていた。 「ねぇ。ユーオン君がこの間壊した、侍従の人形は……あれは何だったのかとかはわからないの?」  それも「銀色」の仕事ではあった。それでも、最初よりはもう少し状況を把握していた部分を、少年は素直に答えた。 「あれも、人間って感じじゃ、なかったと思う。多分何かの千族……それこそ『悪魔』が、動かしてたんじゃないかな」 「――え?」  そこで逆に、術師の子供は意外そうな顔をした。まるで少年が、そこまで把握していたことが想定外と言わんばかりに。 「もし最初の人形と、ユウヤ達から見て同じだったなら。最初の奴らも、もしかしたら『悪魔憑き』だったのかもしれない」  「魔」に堕ちた何かという、悪魔の定義を教えてくれたのは術師の子供だ。それを把握したことにより、少年は、観えていたものが何かを伝えられただけだが、それで逆に術師の子供の所感もまとまったらしい。 「じゃあ……死霊というよりは、一つ一つ全てが、何か目的を持った悪魔に動かされてたのかもしれないね……」  身近な現状把握に特化した少年と、心霊という存在に鋭い霊感を持つ子供。その力を合わせれば、そうして容易く真実の一端に辿り着いていた。
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