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「動かされてるというより、ほんとに憑いてる感じだった――多分、自分の身体は持ってない悪魔なんじゃないかな」  それは没した人間を指す「死霊」よりも、ただ「魔」であると。身体を失った程度では、「力」も意志も明確に残し得るしつこい存在に、顔を顰めながら呟いた少年だった。  それなら……と。術師の家の子供は、その父によく似た黒の、日頃はあえて封じた鋭い感性を持つ目に痛みを浮かべる。 「何が欲しかったんだろう……その悪魔達は」  特に契約のために召喚されない限り、生半可なことでは、「悪魔」は人間に関わることはない。そうした相手の不穏さを、しっかり感じたようだった。 「死んでも何かに乗り移ってまで。悪魔であろうと、確かに相当の執念だよな、それは」  うんうんと頷く兄弟子の前で、少年も青みを帯びた紫の目を軽く澱ませる。 「…………」  少し前の、人形に宿る「力」の声を思い出した。 ――『精妖刃』の躰を勝手に動かす、アナタは何者なのですか。  今ここに在る少年にも、確かに理由があったはずだった。  この躰で目を覚ました時から、少年にはわかっていた。その理由に出会うことがあれば、少なくとも「銀色」は見逃さないと。  それでも後数か月で、少年が養父母に拾われて一年になる。その間何一つ、自分がここにいる理由に出会えなかった。  他にも大切なものは増えた。けれどどうしても、現状はこれでよいのか、自身の存在の理由をないがしろにしている気がしてならなかった。
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