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家族の目を避け、縁側でひっそり話していた男は、軽く杯をあおりながら暗い夜の庭を見つめた。
「あの子は多分……昔のラストと同じなんだ」
その少年はただ、「妹を守る」ために。そのためだけにここにいると、男が深いため息をついたのだった。
その後、少年と実際に接してみてから、彼は思う。
同じどころか、少年は彼よりずっと重症であると。
少年を養子にして半年後、仲間達は仕事や他の事情で、少年を一人で家に置いて旅に出る。
彼にも色々あり、弱る一方の体がさすがに洒落にならなくなってきた。だからひっそりディアルスに戻り、その号外のお尋ね者ビラを見た時にも、驚く以外に何もしてやることができなかった。
「オマエ……何、やってんだ、アラス……?」
幼い頃から行方の知れない、ディアルスの王子をさらった犯人がわかったらしい。派手な懸賞金がかけられている。
その犯人像――珍しい青銀の髪の美形は紛れもなく、黒の守護者でしかなかった。
失踪した上、おそらく記憶をなくした「刃の妖精」。
何故かは知らないが、ディアルスのお尋ね者となってしまった黒の守護者。
彼の関わる世界でありながら、最早彼にはどうしようもないもの。明日の命も知れない足手まといの身には、何もかもが遠い。妹一人助けられなかった彼を、いつかの悪魔が嘲笑っているかのようだった。
彼が黒の守護者と共に残した布石。彼と同じ願いを持つ者と共に、人造の少女が羽ばたくその日までは。
-了-
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