5/12
前へ
/425ページ
次へ
「なぁ――ユウヤ」  難解な問いになるとは承知しつつ、珍しく少年は自ら口に出した。 「何がほしいのか、自分でもわからない時……それを見つける方法って、何かあるのかな?」  それは常に――たとえ記憶があったとしても、この少年には元々わかり辛いものだ。周囲と己の境が曖昧な直観の副作用、それを自身で知るわけではなくても。 「ユーオン君……」  何処か神妙な少年に、敏い子供は少し躊躇いを見せていた。 「……そういう漠然としたのは……目的ある占いでもなくて。ただ、霊感を持ったようなヒト――その方が、何となくわかると思うよ」  この少年に小手先の返答は通用しない。それを知る術師の子供が考え込む。 「ユーオン君みたいな直観でもなくて。誰かの存在や願い、心霊……無意識を見てしまえるのは、霊感くらいだと思う」  だから、と、困った風な、それでも安堵した顔で子供は微笑んでいた。 「根拠は全然ないことだけど。僕は――ユーオン君はそう遠くない内に、待ってるヒトに会えると思うよ」 「……――」 「ヒトかどうかも、本当はわからないけど。でも……向こうも、ユーオン君を探してる気がする。だから――」  心配はないよ、と。そう断言する、幼いながら天才と言われた術師の子供だった。  そうして、その父の公家とよく似た優しい目で微笑む。 「…………ありがとう」  何故かごく僅かに、胸をちくりと刺された気がした。公家に会った時と同じ(おそ)れを抱えながら、少年は礼を口にした。 ――アナタの正体は。アナタは明かす気はないのですか。  この優し過ぎる場所に迷い込んだ異端者。それを責める涼やかな声が、いつまでも少年の脳裏に響き渡っていた。 +++++
/425ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加