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「なぁ――ユウヤ」
難解な問いになるとは承知しつつ、珍しく少年は自ら口に出した。
「何がほしいのか、自分でもわからない時……それを見つける方法って、何かあるのかな?」
それは常に――たとえ記憶があったとしても、この少年には元々わかり辛いものだ。周囲と己の境が曖昧な直観の副作用、それを自身で知るわけではなくても。
「ユーオン君……」
何処か神妙な少年に、敏い子供は少し躊躇いを見せていた。
「……そういう漠然としたのは……目的ある占いでもなくて。ただ、霊感を持ったようなヒト――その方が、何となくわかると思うよ」
この少年に小手先の返答は通用しない。それを知る術師の子供が考え込む。
「ユーオン君みたいな直観でもなくて。誰かの存在や願い、心霊……無意識を見てしまえるのは、霊感くらいだと思う」
だから、と、困った風な、それでも安堵した顔で子供は微笑んでいた。
「根拠は全然ないことだけど。僕は――ユーオン君はそう遠くない内に、待ってるヒトに会えると思うよ」
「……――」
「ヒトかどうかも、本当はわからないけど。でも……向こうも、ユーオン君を探してる気がする。だから――」
心配はないよ、と。そう断言する、幼いながら天才と言われた術師の子供だった。
そうして、その父の公家とよく似た優しい目で微笑む。
「…………ありがとう」
何故かごく僅かに、胸をちくりと刺された気がした。公家に会った時と同じ懼れを抱えながら、少年は礼を口にした。
――アナタの正体は。アナタは明かす気はないのですか。
この優し過ぎる場所に迷い込んだ異端者。それを責める涼やかな声が、いつまでも少年の脳裏に響き渡っていた。
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