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「凄いんだよ! リタンさんはアラス君と本当そっくりだし、スカイさんは知り合いが僕の友達かもしれないって言うんだ!」 「……はぇ」 「僕も何か、スカイさんと初めて会った気がしないんだけど! ――って全然、見たことも喋ったこともない人だけど!」  楽しげな友人を前に、少年は難しい顔で護衛とマネージャーを見つめる。  同じように難しい顔の人形の護衛と、楽しげなマネージャーの黒い女も少年に視線を返す。 「槶君はいいコだねぇ、騙しやすそうだねぇ。丁度いいから、君もレストで働かないかい?」 「ええっ? でも僕、大したことはできないけど?」 「そんなことはない。作家から演出家、下働きから介護士まで、ありとあらゆる職種を求めているんだよ、我がレストでは」 「……何か最後らへん、変なの混じってなかった? スカイさん」  妙に楽しげな友人と黒い女とは裏腹に、少年と護衛はただ、黙ってしばらく睨み合っていた。 「……」  しかしそれも、護衛が最初に口を開くまでの短い間だった。 「……海底らしいです」 「――は?」 「精妖刃が買ったその古い剣は、東の大陸の海底遺跡からの発掘品だと、スカイが言っていました」  何故か淡々と、護衛は唐突に、無表情にそんなことを口にした。 「……私の主が、その仲間の、アナタが滞在する御所の公家と、話したところによりますと」 「――?」 「その剣に宿る何かの力が、アナタを動かし――今のアナタの、意識を保っている源のようですね」 「…………」  それは……と。少年は、困ったように首を傾げた。 「知ってたけど――……あんたやあんたの主は、そんなことを聞いてどうするんだ?」  簡単に言われてしまったものの、この少年の存在に関わる深い真実。  少年は最早、その剣がなければ生きることができない。袴に下げる黒い柄を知らず、ぎゅっと握りしめた。 「……」  人形の護衛は黙り込むが、何故か互いに警戒は緩んだ状態でもあった。 「……リンじゃないんだな。あんたの言っている『主』は」 「彼女は雇い主です。私の宿主になれるような力の持ち主は、ここ数百年は、黒の守護者くらいでしょうね」  その宿主。「水」の力を司る「守護者」の色が黒だと、少年は後に知る。 「でも――リンがいれば、あんたは強くなれるんじゃないか?」  同じ「水」の力を冠する黒い柄の剣。それを持つ少年は淡々と尋ねる。 「それでアナタは、私を警戒しているのですね」 「……」 「アナタの思う通り、霖はアナタの剣を、確かに今でも欲しいようですよ」  少年が護衛を警戒する理由。もしもその黒髪の花形が、この護衛に命じて力ずくで少年の剣を奪おうとすれば、それは少年の終わりを意味する事態だった。
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