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 こちらも暗くなってきた空の下で、氾濫すれば洒落にならないだろう川を前に、少年は怪訝な顔で護衛を見つめる。 「守護者を殺した奴の……側近?」 「彼女が何と名乗っているかは知りませんが。あれは確かに、前代の黒の守護者の顔見知りであり、更に前代の守護者を殺した悪魔のそばにいた女です」  そこで少年の脳裏で、ようやくこの人形と、少年の現在の大切な居場所が繋がっていた。 ――わたくしの主は、共に育った自らの従兄を手にかけるほどの、悪しき『魔』へ変貌してしまったのです。  その時殺された者が、前々代の黒の守護者。護衛はそれを言いたいのだと伝わる。 「って……」  それでも少年は、それを言い出した人形の意図が全くわからなかった。 「オレに……何の、関係があるのさ?」  少年はあくまで、天の民や守護者など、この京都に来るまでは全く関わりを持った覚えがない。目前の人形と同じように、畑違いの存在であるはずだったが……しかし人形の護衛は言う。 「彼女はアナタが、欲しいのではないですか?」 ――アナタは……わたくしの主と、何処となく似ています。 「彼女には大した力はありませんが、意思の強さに関しては、どうやらアナタの比ではなさそうです」 「……――」  自らが曖昧である少年にとって、脅威となり得るはずのその可能性。それを本当の意味で、人形の護衛が知っていたわけではなかった。 「アナタを連れていけるまで、彼女は留まる気かもしれません」  主が落ちた渦中から一歩、あえて離され、人形の護衛は事情を深くは知っていない。ただ憂い気に少年を見て、それ以上は何も口にしなかった。 「…………」  少年はただ、大切な場所に居座る、二つの異物に顔を歪める。 ――あんた……ここに、何をしに来たんだ?  その異物の滞在がもしも、自らの責であったとしたら。  思わず口元を塞ぐほどの、強い吐き気を必死に抑える。
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