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ボツボツと。黒く染まり切った空から、大粒の雨が、やがて降り落ちて来ていた。
「あっちゃー。本当に降ってきちゃいましたかー。皆様撤収ー、テントが流されないよう、注意してくださーい」
「ほらぁ、だから言ったじゃない、スカイちゃんてばー」
うわーん、ごめーんなどと、何故か黒髪の花形の声が響いている。
しかしもう一人の幼げな花形は、赤い髪の娘に何故か突然抱き着いていた。
「!?」
「でも嬉しいー。霖がこんなに元気なのって、イーレンちゃんがいなくなってからは久しぶりだぁ。ほんとにありがとぉ、小鳥ちゃん」
半分涙目で強く抱き着く幼げな花形は、どうやら本気で、黒髪の花形のことを心配している様子だった。
「ユーオン君ー! 濡れちゃうよ、テントに入れてもらおーよ!」
遠目から自分を呼ぶ声に、少年はようやく、ハッと我に返る。
「……行きましょう。お互い、雨と相性は良さそうですが――」
すっと立ち上がった護衛は、最早ほとんど少年に対して、警戒心は無くなった様子だった。
「ずぶ濡れになれば、中身はともかく器は傷みそうです。せいぜい大切に使うとしましょう――貴重な相性の合う器は」
「…………」
少年もただ、憮然と黙ったまま、後に続くしかできなかった。
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