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「それが……クヌギもいて、ジュンもツグミもユウヤもいて。みんなで何でか、草原みたいな所にいたんだけど」 「へぇー。ユーオン君が外にいるの、珍しいね?」 「オレもそう思ってさ。でもその夢では、それが当たり前で……何か色々、おかしいんだ、その夢」  ? と首を傾げる友人を前に、少年はふっと苦く笑った。  そして少年は――その、有り得なかった世界の夢を改めて思い出す。 「オレさ。今はいないけど、妹みたいな奴がいるんだけど」 「ええ!? そーだったの、ほんとに!?」  身元不明の少年の意外な事実に、帽子の友人が目を丸くする。 「なのにその夢は、そいつがいないことになってる有り得ない世界なんだ。でも途中でオレは、そいつを思い出して……いないのはヘンだって、そいつを探して、気が付けばずっと一人で走ってたんだ」 「――」  彼らの傍から一人で走り出したという、その夢の中にいた少年。孤高な焦りの想いを帽子の友人は重く汲んだようで、ふっと一瞬、沈黙が訪れる。 「何処に行ったのかよくわからないけど、足がもつれて転んで、立ち止まった時に。急に誰かが、空から降りてきて……」 「……降りてきて……!?」  その夢の中で、理由のわからない焦りに支配されながら、少年は両手と膝をついて呻いていた。  その時少年の前に、あまりに唐突に現れた、銀色の髪の誰かがいたのだ。 「ソイツのこと……オレは多分、凄くよく、知ってるはずなのに」  銀色の髪で、赤い目の誰か――  人懐っこい顔で笑う誰か。それでも鋭く赤い目は常に不敵で、強い意思と感性を持った顔貌。  この京都で少年が出会った者達と、似た系統の意思の力。少年が強い親和性を持つ呪いという「力」を、少年に最初に与えた誰かがそこにいた。 「その夢の中ではソイツの名前も違って、オレには呼べなくて。ソイツもオレを知らなくて……でも、オレが知ってるはずの昔のままの顔で――笑って言ったんだ」 ――シーのこと、よろしく頼んだぜ。 「それはオレが探してた、妹みたいな奴のことで……その夢ではそんな名前だったみたいで」 「シーちゃん? って愛称だよね? 多分」  うん、と少年は頷き、夢の終わりをそこでまとめた。 「その後すぐに、ソイツは消えて。代わりにやっと、探してた奴がそこにいて……いつでも笑ってる奴なのに、助けてって一人で泣いてるから。オレの知ってるそいつの名前を呼んだら……そこで全部消えて、目が覚めたんだ」
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