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「うわぁ。なかなか意味深な夢だね、確かにそれって」
ごくりと、帽子の友人が息を飲んだ。
そして少年自身気になっていた、同じ疑問を口にした。
「そこで、違う名前の方……シーちゃんって呼んでたら、どうなってたんだろ?」
「…………」
その有り得ない世界の夢の、実情は何か。この先少年にわかることはない。
夢の理由より大切な意味。泣いていた者に助けが必要であることだけは、既に知っていた願いだった――少なくとも「銀色」にとっては。
――あなたのせいよ……。
慣れ切った昏く赤い夢。それがただ、違う形で現れただけだと。
ひょいっと。そこで不意に、第三者の感想が述べられていた。
「――夢が覚めずに、シーちゃんも帰ってこれなかったかも?」
「――!」
「あれ、スカイさん?」
にこにこと、自身も近くでチラシを配っていたマネージャーの黒い女が、いつの間にか近くに来ていた。少年達の背後から間に顔を出していた。
「イーレン君、鈍そうだしねえ。よっぽど強いSOSじゃないと、そんな夢はみないんじゃないかい?」
なら気を付けてあげなよ、と、黒い女が何故か口を挟む。普段の営業とは微妙に違った、何処か親しげな口調だった。
「…………」
違うと言っても、あくまで行方不明の妖精の名でそのマネージャーは少年を呼ぶ。軽く睨む少年を、近くにいる帽子の友人がハラハラして見守る。
「イーレン君が信頼する誰かの姿をとってまで、シーちゃんの危機が伝えられたわけだよね、その夢。それは大変だよね?」
「……オレは別に、そうは思わないけど」
その嘆き、昏く赤い夢は、本当は今に始まったことではなかった。
ただ、その有り得なかった世界の夢が、古い痛みを呼び起こしただけ。それを少年は何処かで知っていた。
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