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そうして、一人の妖精が命を落としたその瞬間から、その「剣の精霊」は世に顕現することとなった。
その直前に、妖精が最後に買っていた剣が、海底から掘り出された古い時代の「力」だった。
この一座に加わる前に、少年は改めて占い師に会いに行った。
やっと会うことができた占い師は、様々な真実を率直に教えてくれた。
――いまやお主は……その自我を剣に依存した、『剣の精霊』。
宝の剣の中にあった古の「力」。それがぼろぼろだった妖精の体を辛うじて蘇生させ、顔などを僅かに造り替えた。
そうして妖精の躰を使い、少年は少年として、その目を覚ましたのだ。
少年も尋ねる。果たしてそれは、最早変えられない定めであるのだろうかと。
――この身体で、コイツが目を覚ますこと、できるのかな?
体は蘇生しても、妖精自身の意識は戻らなかった。そのためそのまま剣の内の「力」が、呪われた生を受けることになった。
「本当に……ろくでもないよな」
無表情に、青白い剣を掲げて見つめながら、少年は口にする。
「生きてるのはオレじゃなくて、こっちなんだから」
本体は今も、剣のままである少年。だからその剣が傍になければ、最早意識を保つことすらもできない身の上だった。
――妖精なら羽があるはずなんだけど……。
周囲から何度か聴かされた言葉を、少年は忘れなかった。だから雨女の胸元に、探していたものの一つを真っ先に見つけた。
雨女から譲り受けた蝶型のペンダントを、少年は剣に纏わせる。この先決して無くさないように、しっかりと巻き付けていた。
「……くっつくかどーかは、わかんないけど」
雨女にも同様に言ったことを呟く。けれどこれがあれば、妖精はまだ、目を覚ませるかもしれない。
それを思い、蝶型のペンダントを見つめながら、一人で苦く笑い続けていた。
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