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 レストの巡業。午前中は、京都もしくは近隣で外回りを。  午後からは内回り、京都で上演する舞台の練習と、なかなか突然、赤い髪の娘は多忙な生活を送ることになっていた。 「今月の中旬二週間、週二回公演なので計四回ですね。もしもご家族を呼ばれるなら、初日と千秋楽の二回をお勧めしますよ」  練習は本当に根を詰めて行っているのに、上演回数がそれだけというのは勿体無い、という声も身近で上がる。 「さすがに無理だから。いきなりそんなに沢山するの」 「えー。期間長くなれば観に行けるのにって、ぼやいてたよー」 「幻次さんがまず許さないよね? 何で帰ってこないーって、昨日も泣きながらヤケ酒呑んでたよ、鶫ちゃん」  その多忙さの中で、御所まで頻繁に戻るのも返って疲れる。三日という約束の間隔は開き、御所の子供達の方から、今日は朝から川辺にやって来ていた。 「特に鶫の身辺に変わりはないのか? ユオン」 「うん、今の所。危険なことも、最初に思ったよりは無さそうだった」  一番の不安材料だったのは黒髪の花形の動向だ。それが少年にとって解決していたため、ここ数日は至って気楽に過ごせた。川辺のテントで花形達や娘と共に、毎夜がわいわいとお祭り騒ぎだった。  黒髪の花形の方も、あれから随分と物腰が落ち着いていた。赤い髪の娘がなるべく快適に過ごせるよう、最大限に気を使ってくれていた。  むしろ気になるのは、花の御所の近況だった。 「御所の方はどうなんだ? あの客の女……大人しくしてるのか?」 「ああ。でも何か、もうすぐお暇すると言ってたらしい」 「……?」  暮れ前からずっと滞在していた客人について、兄弟子が思わぬ展開を口にする。少年は怪訝な顔付きになる。 「新たな護衛、それも女の手練れが雇えるかもしれないんだと。ほとんど御所にいたのに、どうやって探してるんだろうな?」 「……いなくなるなら、何でもいいけど」  しかしどうしてか、その客人が去っていく時こそ、何か――花の御所にいる者達にとって、良くないことがあるのではないか。不意に少年は、御所に帰りたい気持ちに唐突に襲われていた。
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