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 少年がそこで、意識を失った赤い髪の娘の姿を目にしなければ、少年はすぐにも敗北を認めたはずだった。  初めにこの相手を観た時もそうだった。「銀色」に変わろうとはしたものの、敵わない相手であるとわかった。だからその後に倒れてしまった。 「っ――……!」  激しい動悸と嘔吐(えづ)きを抑え込んだ。雑念を捨てて、銀色の髪の少年はその剣に白い光を纏わせ始める。 「鶫達に――……何かするなら……――」  最早何も、躊躇うことはない。命を削る光を最大に消費することを決める。 「あんたが誰だって……俺には関係ない……!」  同じ青い目を持った相手に、少年はその呪われた剣を向ける。  自身の命と引き換えにしてでも、躊躇なくその刃を振り下ろしていた。  ふ、と人影は、黒い微笑みを宿す。迫り来る剣を青い目で見返す。  バカだね、と。  その生来の霊的な感覚と、夢を覗き見る旧い目を以って、人影がとっくに知っていたこと。その「銀色」を止める方法をけろりと見定める。 「何もしたくないから――……私はここに来たんだよ?」  少年を含めて、娘達を決して傷付けまいとする意思がそこに在った。  だからソレは、その命をかける少年以上の、強い願いであると――白い光を纏う剣を、類稀な剣技で事も無く受け流していく。 「残念だけど。生きてない上、力も無い私にはそれも通じないから」  それだけが強みだった人影は、少年の懐を着物だけ切り裂き、言霊の札を己の剣の切っ先に引っ掛けて奪った。 「ほら。自重してね――キラ君?」 「――!!」  そのままスっと、剣を振るって少年の額に札を貼り付ける。  瞬時に強く胸を掴んだ少年は、そのまま崩れ落ちた。  札はすぐに、その後に燃えて消えてしまった。  「銀色」を封じる言霊の「力」で、激しい動悸に襲われた少年が次に目を開けた時には、思い出せない人影の姿は何処にも無くなっていたのだった。
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