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本当にただ、意識を失っていただけの娘は、程無くしてから気が付いていた。
束の間の午睡から覚めるように、娘が穏やかに目を開けた時には、金色の髪の少年もぎりぎり体を立て直し、娘を大切に抱えて座り込んでいた。
「……――え?」
「……――……」
娘は咄嗟に、状況がわからなかったらしい。少年の腕の中で覚めた目には、うるうると、子供のように涙ぐんでいる金色の髪の少年が映った。
「ツグミ……目、覚めた……?」
隣に正座した状態で、少年は壁際の娘の上半身を横向きに抱えていた。そのままぎゅっと安堵のあまり、娘を力の限りに抱き竦めていた。
「ちょ、ちょっと――……!」
娘が焦る。それで全身に血が通ったのか、一瞬で身体が赤く熱くなっていた。それも感じて少年はやっと一息をつく。
どちらかと言えば、少年はヒトに触れるのを避ける方だった。娘は驚きのあまりに抵抗もできず、腕の中で硬直してしまった。
「良かった……全然、目、覚まさないから……」
少年にとっては、ごく一瞬の抱擁だった。娘が今まで通りで、何も変わりなく温かいこと。それだけで世界が安らぎに包まれていた。
かちんと固まる娘を離すと、正座の体勢のまま、娘の体から手を離した。
娘は横向きに座り直し、とりあえず埃を払っている。わけがわからず盛大に赤まった顔を少年から必死にそむけていた。
「何があったのよ、これ……?」
「わからないけど。気が付いたら、ツグミが倒れてたから」
少年はまだ心配が治まり切らない。涙ぐんで両膝を掴みながら、それ以上の事情を考える余裕もなかった。
「……何でそれだけで、アンタはそんなに、ぐしぐしとしてるのよ」
その直向きさは、娘からは子供っぽくみえたらしい。けれどおそらく、これが金色の髪の少年には本来の姿だった。
ただひたすらに、娘の無事だけを案じる少年がそこにいること。娘は半分納得いかなげに少年を見つめた。
「って、まだ、大して時間もたってないじゃない」
休憩時間は残っている。娘はそこまで長く気を失っていたわけではないはずだった。
何故意識が無かったのか、それは気にかかるが、珍しい生活での疲れも多少は自覚していた。
「それより……どっちかっていうと――」
「…………」
娘がそれを、座り込んでいる少年に口にするよりも早かった。
完全に気を取り直していた娘を観て、ふっと少年は、そこでぱたりと倒れ込んでいた。
「……」
どちらかと言えば、少年の方が余程、娘より真っ青な顔色で死にそうに見えた。
完全に意識を失い、か細く拙い気配の少年に、ふーっと頭を抱えながら溜息をついた。
「何て言うか……わけ、わからないんだけど」
これはとても、自らの手に負える状態ではない。一目で少年の窮状を看破した娘は、自宅へと術の力による連絡を行い、瀕死の少年の迎えを要請したのだった。
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