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「何だ。アラスの奴、当分ジパングには来そうにないのか?」 「主がこの先、貴方達に何か仕出かすなら、私にご連絡下さい。その時は遠慮なく、主をぶち殺して止めるように命じられています」  事情を知らない兄弟子は、よくわからないまま、適当におうと頷く。至って本気らしい「力」の人形は、そのために宿主から独立させられたのだと、無表情に杯を含むのだった。 「槶君、色々お手伝い助かりました。槶君はなかなか、意外にできるオトコですね?」 「えー、こんなくらいで良ければ、いつでも言ってよ♪」  マネージャーと帽子の友人は、何故か期間中から何かと話している姿が多く、お人好しの友人を体よくこき使っただろう黒い女だった。 「それにしても、やっぱりスカイさん、誰かに似てるなぁ?」 「そうですね。ちょっとヒントをあげてしまうなら、私のSは、シーちゃんのSなのですよ?」  スカイ・S・レーテと名乗る黒い女。それは帽子の友人と話すことが楽しいらしく、あっさりそんな本質を口にする。 「え? シーちゃんって何だっけ?」  至って真っ当な感覚の持ち主の帽子の友人は、既にそうした、他愛ない話を覚えているわけもなかった。  周囲でそんな会話が交わされながら、少年は目の前の者しか見えておらず、隣のそんな話を全く聞いていなかったのだった。 「……あのさ、ツグミ」 「――?」  ぐいっと。普段から食が細いわりには、お酒は妙に進む金色の髪の未成年が、赤い髪の娘の目に映る。  片手で杯を含む少年は、真面目そのものの、苦い目付きと硬い声色で―― 「……はしたないのは、良くないと思うにょろ」 「――はい?」  全く唐突な謎の語尾に、聞き違いか、と娘が目を丸くする。 「ツグミは今のままでいいと思うにょろ。特別変わったことをしなくても、ツグミは十分凄い奴だにょろ」 「ユーオン……アンタ、お酒入るとそんな喋り方になるの?」  顔色もテンションも、普段と全く変わらない少年であるのに。何故か語尾だけ変調を来したその状態に、わけのわからない娘はとりあえず、杯に続きを注いでくるのだった。
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