半年前 -あの子がいなくなった-

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 ずれてしまった二つの心。それなら二つ、違う世界があれば良い。  どうしてなのか、そんなバカげたことを夢現に思った。しかし突如、優しい夢は終わりを告げる。 「こらー! ヒトの寝床でいつまで眠りこけてんだよ、翼槞(よくる)!」 「……ふ、え?」  全く聞いたことのない声。それなのにはっきりと、彼の名を呼ぶ知らない少年。 「汐ノ香(しおのか)がずっと探してるっつー! いい加減起きろ、さっさと仕事行け、それでも黒の『鍵』かよアンタ!」  ……汐ノ香? 誰、それ。そう思いながら、それは大切な相手のはずだ、と焦って目を開けた。  目の前には、見知った城の色褪せた天井が広がっていた。 「え……南の、城?」  この古い造りは仲間の医者――ザイの住処だ。何度も泊めてもらったのでわかる。  そして目前で起きろと怒る少年は、紛れもなく、先程森で誰かに殺されていた見知らぬ少年だった。  見知らぬはずなのに、彼の口は勝手に少年の名前を呼んでいた。 「ああ……ゴメン、水燬(みずき)。シィが、オレのこと探してるの?」 「シィって言うなよ、シーと紛らわしいだろ。汐ノ香、諦めて母さんと世間話してるぜ」  オレの部屋に隠れてまでさぼるなよ! と、少年に追い出された。  そうだ。この少年は城主ザイの息子で、シィとは汐ノ香、彼と共に在る「守護者」の天使だ。どうして忘れていたのだろうか。  何かがおかしいと感じながら、彼は汐ノ香を探しに、城の客間へと向かってみた。
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