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上編DR・プロローグ
激しい吐き気で、目が覚めた。
「っ……――」
暗闇の中、仄光る青銀の剣が横にある。
少年はもう、何度目かわからない同じ夢を持て余す。
――あなたのせいよ……。
近くで眠る少女達を起こさないよう、止まらない呻きを一人堪える。その夢は何度も少年を苛み続ける。
嘆きの夢と憎悪の夢。二つの昏く赤い夢が少年を侵す。
――あいつだけは――絶対に殺す。
「っ、ぁ……」
永く、境界の曖昧な自らの実意よりも、その目は誰かの夢を我が事と観てしまう。
けれどそれらは痛いだけで、少年が抱える旧い剣の夢よりは、遥かにましだった。
「なんて……――ヤツ……」
その二つの、血塗られた夢よりも赤い――
呪われた剣の青白い光に、少年はただ、嘔吐き続ける。
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