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 その小さな世界は、「天上人(てんじょうびと)」の宝箱だった。 「天界と、魔界と……地、界?」  自身が今在る、現世を知るため、金色の髪の少年はその占い師を訪ねた。  袖の無い黒衣と袴という変わった姿の者に、占い師は長い話を始める。 「そう。この『宝界』は、それら『力』の世界の中心地なのじゃ」  そこには互いに干渉不可能な、数多の異世界がある。  最古にして最高次の世界が「天界」であり、「神」に似せて創られた「天上人」が原初には存在していた。  その直下で絡み合う三つの世界は、神の軸から強い力を得られるものなら、世界間の移動が可能だった。 「『天上人』の末裔が『天界人(てんかいじん)』……今お主の周囲にいる者じゃ」  「天上人」は三つの世界で、軸から最も遠い世界、混沌に呑まれて光を失った魔の海をゴミ捨て場にしたという。  やがてそこは「魔界」と呼ばれ、天上人だったものが原形を留めない「魔族」となり、増殖して台頭していく。 「どうやらお主には、『地界』と関わりある身内もいるようじゃが……」  神の軸から直近の世界は「地界」と呼ばれ、「力」の流れは在りながら軸に背を向け、宝界や魔界と時の流れも違う。そこではいつからか地球という「力」なき場所が注目を浴びる。 「それはいいから。この世界のことを、詳しく教えてほしい」  自身が異端者だと感じていた少年は、ただその続きを尋ねる。  占い師も少年の違和感を視ながら、この世界たる「宝界」の話を始める。  この宝界――魔界と地界の間にあり、神の軸から適度に「力」を受けられる世界は、天界よりもずっと小さかった。神から自由度が高い世界は、天上人に好まれていた。  宝界を発見した天上人は、彼らに似せて創った「地上人(ちじょうびと)」を、空っぽな宝界へ放流したのだ。 「ただし『地上人』は、天上の鳥たる『天上人』とは違って、神の力を受ける『翼』を持たされていなかった。『力』の『意味』に縛られる、『神』の制約を逃れるためにな」  そのため「力」を持たない地上人は、後世の地界の地球と同じように、原理が中心の営みを築き上げたという。
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