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「しかし地界とは、この宝界は似ても似つかない」  天界、魔界、地界と、多様な世界へ行き来が可能な宝界には、様々な、力を流用できる「化け物」が存在していた。  力なき地上人がその化け物に対抗できるように、天上人は五つの「聖地」を宝界に置き、その地を通して宝界へ降り立つようになった。その後に彼らの秘宝を地上人に与え、文明の発達を促したといわれる。 「それが……『宝珠』ってこと?」  少年が知る者達が守る「宝」。その正体も少年は興味があった。 「あくまでこの時代、『宝暦』においてはな。『古代』……原初の世ではそれは、もっと生活に則した道具や叡智のことだっただろうて」  「宝珠」はあくまで、世界の「力」のみを司る秘宝。  そんな数多な宝の存在に、この世界は「天上人」の宝箱――宝界と呼ばれるようになり、長い時間が過ぎていった。 「しかしこの世界最古の人間は、完全な滅びを一度迎える」  地上人はやがて、神に依存せずに力を流用できるまでになった。そのまま「力」の「意味」を無視し、神の禁忌に触れてしまう。  そこに至って神もついに、その戒めを宝界に放つ。 「そうして宝界に現れたのが、お主のような『精霊』と、自然の脅威をその身に宿す『竜』という存在なのじゃ」 「…………」  神は「自然」を、神に縛られない脅威と知りながら解き放った。  それまではただの静物でしかなかった、世界のある部分。「自然」をそのまま、化け物とした「精霊」と「竜」。その強過ぎる「力」を地上人は制御できず、やがて滅びを迎える。  それに呼応し、天上人と神にも断絶が起こる。 「『宝珠』が宝界の『地』に降りたのも、丁度同じ時期であるそうじゃ」  天上人は、神に従い天界に残る「天使」と、「地」に降り「宝珠」を守る天界人へと分化し、それぞれの領分を保ち存続していく。  そして、宝界という数多の化け物の交差点に降りてしまった「宝珠」を狙う魔族と、天界人の争いは古くから根強く続く。  そのように、天上人と地上人が消えるまでが「古代」。  その後、神と天使が最有力となった時代が「神暦」。  そして長く時の流れた今この時代は、「宝暦」と呼ばれていた。
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