4人が本棚に入れています
本棚に追加
「ところでお主は、一見は、明らかに妖精の類じゃが」
そして彼女は、少年が初めから口を閉ざしてきたことに踏み込む。
「最早、精霊族であるが妖精ではあるまい。お主は何者じゃ?」
少年はそこでようやく――この占い師の元に来た真の目的。
他の誰にも打ち明けなかった、最後の問いを口にした。
「……遅かったわね、ユーオン」
「――ツグミ?」
その占い小屋を出て「花の御所」へと帰路についた少年を、占い師曰く混血らしい娘が、道の先で待ってくれていた。
「梅にちゃんと、聞きたいことは聞けたの?」
「ああ。聞くことはできたけど、答はあまりわからなかった」
……と。気の強そうな黒い目で、肩につくすれすれの穏やかな赤い髪の娘は顔を顰める。このジパングという島国では定番の、着物という服の長めの袖も構わずに腕を組んだ。
少年は娘の難しい顔付きに、微笑みながら首を傾げる。
「何でツグミが怒ってるんだ?」
「バカ。アンタがまた、変な所で笑うからじゃない」
目的は果たせなかったというが、それでも納得しているような少年。その顔付きに、娘は何故かイラっとしたらしい。
そんなお人好しな娘の姿に、少年は何かを思い出しかけた。
「――ツグミは、いい奴だな」
一瞬の温かさと軽い懼れ。それを誤魔化すようにまた笑った。
そうして、その赤い髪の娘の近くで過ごした数か月――
優し過ぎた時の夢も、呪われた夢と共に少年は抱く。
そのどれをも自らは語らず……ただ運命を探し始める。
+++++
最初のコメントを投稿しよう!