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「レイアスとアフィも、いつ帰るかわかったもんじゃないしな」  一応その二人の義妹にあたる少女はともかく、不遜にも、拾ってくれた化け物達を少年は呼び捨てにする。 「あ。ユーオンやっぱりここに置いてったこと、根に持ってる」  妹分はさらりと、悪意なく笑いながら言う。  少年も同じくらい、さらりと笑って返す。 「そりゃな。ある日突然、目が覚めたら家には誰もいなくて、『しばらく出かけてきます。留守をよろしくね』って書置きが一つだけでさ」 「うわー。そりゃ鬼ね。いくらコイツが新入りで引きこもりの養子だからって、その放置ぶりはやるわね、あいつらもラピも」 「やだなぁ? 私はちゃんと、急いでるんだし、書置きは別にいるかなぁ。って言ったよ?」 「……」  鬼。と妹分を見る少年にも構わず、妹分は続ける。 「大体こないだの、水華のご両親探しの旅が、突発過ぎなの。付き合う身にもなってよね」  その急な出発の原因とも言えるのが、妹分が同伴した茜色の髪の少女の旅立ちだった。 「何でよ。誰があんたに付き合えって言ったのよ」  どちらかと言うと、本当の親を探すというのは口実に近く、少女は一人で養家を飛び出し、自由気ままに世界を放浪したかったと観える。そこに思わぬ目付け役がついた結果にひたすら不服気だった。 「しかもあんた、完全に足手まといじゃない」 「うん。私ちゃんと、水華の足を引っ張って無茶させないようにって、おば様の言い付けしっかり守ってるでしょ?」  あくまでニコニコと、妹分はそんなことを言ってのける。  魔物や千種の種族といった、危険物が横行する世界で、一人旅を許されるような人間ならぬ力を持った茜色の髪の少女とは、妹分は違う。護身術の心得がある程度の、基本はただの人間だった。  首元の小さな笛と、常に連れ歩く妙なペットの存在を除けば。
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