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しかし弱小な人間の妹分は、冷静な見解をもって笑う。
「大丈夫。ユーオンはそもそも弱々だから、誰相手でも弱い者イジメじゃないって♪」
更には、無駄遣いできる力も無いとまで妹分は追撃する。
「精霊の使えない精霊族さんだもんね、ユーオンって」
「……いつも的確過ぎてヒドイよな、ラピスって」
「宝珠」などのように、世界の強力な外付けの「力」の中で、「精霊」は三つ目に強大だと言われている。種々の自然の力の化身と言うが、その時の少年はそれすらも知らない状態だった。
そうした弱小な少年に比べて、茜色の髪の少女が持った力は強過ぎるのだと、妹分は少女の事情も冷静に説明する。
「水華はね、剣も使っちゃうと、殺人鬼なレベルらしいよ?」
その意味でもそれは救命処置であると。なるほど、と何故か、大きく納得していた少年だった。
そうしたことを少年が、ぼけっと思い出していた時に。
「でも、鶫ちゃん達の所の方がユーオンは良かったんじゃない?」
「え?」
突然、わりと真面目な目つきで少年を見て言った妹分に、少年と少女は揃って振り返る。
妹分は深い青の両目に僅かな苦笑を浮かべる。一見は肩までの長さの瑠璃色の髪で、部分的に長く伸びて丸い髪飾りで括った房を、細く弄りながら呟く。
「まさか鶫ちゃんのお家でお世話になるなんて。本当に、私も羨ましいくらいだもん」
少年が世話になっていた御所には、少なくとも三人子供がいた。その子供達と後一人、仲の良い街の友人は、この妹分の方が以前から友達関係だったらしい。特に街の友人とは、PHSという伝波道具で連絡を取り合う間柄なのだ。
「本当は、保護者としておとーさん達が謝罪と迎えに行かなきゃダメだったんだし。やっぱりもう少し、ユーオンは御所にお世話になったら?」
「まさか」
妹分の心配をあっさり否定する少年は、妹分が帰ったと知るや否や、無理やりその御所を後にこの家に戻ってきていた。
「ゲンジ達も、いいって言ってくれたし。剣もまた、訪ねれば教えてくれるしさ。わざわざそれ以上、面倒かけることないだろ」
剣の師で、赤い髪の娘の父の名を穏やかに笑って言うと、妹分は無言で、少女の方は何処か呆れたような目をする。
「それならちゃんと、妹のこと守ってやれよって言われたしな。オレの仕事は、ラピスのいるこの家の番人だろ」
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