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「……ユーオン。自宅警備って言えば要は、引きこもりさんの代名詞なんだけどね」
「?」
「そもそも、アンタの弱っちさでよく言うわ。精霊族なのに、精霊も使えないくせに」
「相変わらず容赦ないな、ミズカ……」
何故か少年は全身傷だらけで、瀕死の状態で今の養父母に拾われた。それまでの記憶は全て失っており、かなり典型的な金色の髪や紫の目に尖った耳という容姿から、精霊族の一種の妖精だろうと、それだけ周囲は把握していた。
基本的に外に出たがらない少年は、養父母と妹分、少女とその養父母以外に関わりを持とうとしなかった。今回、少年と関わる者が増えたことに妹分は喜んでいるらしい。
「何かなあ……」
その間の少年の様子をいくらか、御所の友人達から情報を得たらしく、妹分が溜息をついている。
「私も普通じゃない気はするけど……私よりひょっとしたら、重症じゃないかなぁ……」
「??」
少年を一人この家に置いていくと、育ての両親が判断した理由。それを思い、妹分は今の状況に危機感もあるようだった。
「にしても、『花の御所』って実際どんな所なの? あたしももてなしてもらえないかなー」
「図々しい奴。漢字の名前持ってるからって」
「アンタに言われたくないわよ。何カ月居候してたと思ってんの」
この容赦なきツッコミ役、茜色の髪の少女がいるなら、心配はないだろうと少年は思っている。養父母が帰るまで、ひとまず始まることになった三人暮らし。
「良かったら水華も、みんなに紹介するよ」
それには本当に嬉しそうな妹分に、少年もようやく安堵して笑った。
そして昏く赤い夢達を、意識から追い払っていた。
――あなたのせいよ……。
――あいつだけは――絶対に殺す。
その、以前から何度となく少年を襲う二つの凄惨な夢。
それが少女達がそばにいる時に現れるものと、一人、気付きながらも。
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