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「あ、もしもし、くーちゃん? 今伝話大丈夫?」  妹分はPHSという、世界を飛び回る伝波とやらを利用する通信具を持っている。それを片手に、そうしてよく、友人や養父母と遠くに在っても連絡を取り合っていた。 「ユーオンのこと、うちまで送ってくれてありがとー。南の島のこととかいっぱいお土産話あるから、また遊ぼーね♪」  ラピス・シルファリー。瀕死の少年を拾った養父母が元々連れていた瑠璃色の髪の養女は、今はそう名乗っている。  昨秋に茜色の髪の少女と旅立ち、東の大陸に行った後、年末から何故か南の島に滞在し、更には北の島にも遊びに行ったという。そんなフットワークの軽い妹分は、西の大陸出身のはずだ。  ただの人間にも関わらず、そうした感じで世界を回る妹分は、少年からは非常に危なっかしく観える。それを守ろうと、必死になり過ぎる少年を逆に養父母が心配し、妹分の旅立ちの際には少年は一人でこの家に残された経緯があった。 「大丈夫だよー。ちょっと嫌なことあったけど、私は元気だよ~」  六歳の時に父が死に、母は後を追って自殺したという悲愴な過去を持つ妹分は、常に笑顔を絶やさず、危うげに明るい。  それでもこうしてPHSを手に話している時は、一番素直に楽しそうであり……それにもいつも、安堵する少年なのだった。 +++++
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