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「花の御所で、今のオレのボスを殺そうとしたって聞いたけど」  この少年は、銀色の髪となる時はそうした流血を全く厭わない。金色の髪の時より遥かに強いとは、青年もあらかじめ聞いていたらしい。 「あんな、ただの偵察者で何もできないような弱っちい女――容赦なくブチ斬るっていうのは、どうかと思うけど?」  御所にいる者に仇なす相手を、ボスと呼ぶ青年。命に関わる戦いになると知りながら、青年は本来の仲間の公家に背を向けていた。それでも悪びれなく尋ねる姿に、少年はただ押し黙る。 「金髪君はそんな暴走や、弱い者イジメはしないんじゃない? それともそれも――……『銀色』君の思い通りなのかな?」  銀色の髪の少年は、そうした自身のことは全て覚えている。  金色の髪の少年は、銀色の髪の時に何を考えたのかを覚えていることができない。ただ何を言ったのか、自身がどう行動したかは覚えているという中途半端な状態だった。  青年は、あくまで冷静な「銀色」を感じてか、不敵に笑う。 「面白いなぁ。何でオレが、オマエを攫っていこうとするのか……フツーそれくらい尋ねるもんじゃない?」 「……」 「残念ながら、ついこないだ鶫ちゃんにやられて修理中だから、今日はあの人形……オマエを気に入ったらしい天使ちゃんを、連れてこれなかったんだけどさ」  青年が少年を連れて行くと口にした理由。それは少年が、花の御所に引受けられた理由と似ている。  少年は以前、天使を模した姿の人形達がまるで生きているように動き回り、御所の者を襲った所に通りすがり、御所側の者達に加勢していた。  その時に人形使いに目をつけられた。そうした事情は、この青年に初めて会った時に聞いていた。 「オマエが人形を壊した力が、あいつは気になるんだってさ」  人形使いの事情は、青年を操る魔性の者が、青年の本来の仲間に敵対する戦いとは関係がない。青年達の宿命、世界を巻き込む対立とは比較にもならない、小さな縁故に過ぎなかった。
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