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 だから少年には、そちらの方が余程捨て置けないことだった。 「……俺のことより、アンタに訊きたいことがある」 「――?」  不思議そうにする青年の前で、少年は拙く重い口を開く。 「……何で、アンタは……頼也達を裏切った?」 「……」  少年を御所に引き受け、かばい続けてくれた公家は、この世界の宝である「宝珠」の守護者。青年は公家と同じく守護者であり、同時に吸血鬼という「悪魔」だからこそ、大きな力を狙われたはずだ。それで裏切ることになったと少年は気付いているが、無情に青年を見る。  「宝珠」と「守護者」を巡る、「悪魔」との戦い。それは世界の片隅で、世界を巻き込む規模で起き得る危険なものだと、目前の青年の力の大きさからも少年は感じていた。  なるほどね――と。  守護者たる青年は、銀色の髪の少年が、安全な結界の中から出てまで現れた理由をそこで悟っていた。 「それでオレに連れて行かれたとしても、オマエはそんなことをわざわざ訊きに、ここまで来たんだ?」 「……」 「だから一人で出て来たのかな。少なくとも、ここには一人は……オレに対抗できそうな力の持ち主がいるのにね」  銀色の髪の少年では、この青年に勝ち目はない。  もしも茜色の髪の少女に助力を頼めば、二人がかりでなら、勝算も観える。そうした弱味を、強大な力を持つ宝珠を扱う守護者と言えど、青年も持っていた。  しかしその選択は最初から、少年の中では考慮になかった。 「オレ側の目的を知って……全部一人で背負うつもり?」  少年に少女達を巻き込む気は無かった。しかし青年はそれを嘲る。 「残念だけどさ。後一人、標的がいるって、最初に会った時にオレは言ったよね」 「……――」  現状把握に優れる少年が、何故一人で青年と対峙しているのか。改めて苦笑いながら、もう一つの理由を明るみに出した。 「オマエは水華を――……オレと戦わせたくないわけ?」  ぎり、と。銀色の髪の少年は顔を歪めて奥歯を噛みしめる。  青年は少年のその勘の良さに、素直な賞賛を贈る。 「よくそこまで気が付いたなぁ。オレは全然、オマエが水華やラピちゃんと知り合いだって、夢にも思ってなかったのにね」 「――……」
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