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 占い師は初見で、記憶喪失の少年の名前を引き出した。また、少年が常に死に近いと、その命の拙さを指摘していた。 「お主は無駄な力を使ってはならん。力がお主の命だと思え」  ある宝の剣と一つになった、(いにしえ)の誰かである少年の命。  それは「力」を蓄え、斬撃と化することができる剣が蓄えられる「力」の分量だけが、命の上限だった。  その宝の剣が冠する力と同じ、「水」を司る守護者の青年は、不思議そうに笑う。 「精霊っていうのは、オレも使うからわかるけどさ。自然界の何からも現れる、魂が無い生き物なんだよね」  (からだ)は精霊族でありながら、精霊を使えない少年。その噂もどうやら聞き及んでいるらしい。 「だから本来は、魂を持つ生き物を宿主にして力を貸すのが純然たる精霊だけど。妖精はそれを、魂の役割を果たす羽を持つことで、精霊単体で動ける精霊族だって言うね」 「……」  広義には命そのものを。狭義には精神――自我を司るものが魂という一つの「力」だと、青年は口にする。 「オマエの場合、魂がその剣で、身体は元妖精の精霊って所か。頼也兄ちゃんからきいてなければ、オレもわからなかったけどね」  公家がその実状に気付いたのも、半ばは偶然だった。少年がその剣から遠ざけられた時の異変を目にしていたからだ。 「だからオマエは、剣が近くにないと無力化するんだってね? 要は剣だけ奪えば、オマエを連れてくことは凄く簡単なワケだ」  つまり青年は、少年を無傷で連れて行きたいようだった。 「ほんっと。天使属性持った奴のお願いは、弱いんだよねオレ」  青年がすっと、腕輪としていたの三日月型の装具を外して手に取る。淡い光を放ったそれは次の瞬間、弓のような形の武器となり、手元に現れていた。 「――!」  それは茜色の髪の少女が持つ腕輪と同じ、普段は携帯型をとるよう造られた高度な武器だ。その製作者も同じだと、少年は一目で看破する。 「まぁ、力で戦っちゃうと水華にも気付かれるだろーし。水華に加勢に入られたら、オレも少しは苦戦しそうだし」  その武器の、中央に填まる黒い石に近い取っ手ではなく、刃のつく反りの峰につく取っ手を青年は持った。曲刀を構えるように、剣を持つ少年に向き直る。 「……」  力で戦えば、それだけ少年は命の消耗が早い。それを知って武器戦を誘う相手の甘さに、知らず青い目を歪める。  そしてそんな、長い武器を持った二つの人影をよそに。 「……悪いけど。とっくに気が付いてんだけど、アンタらのこと」  見事に気配を殺した茜色の髪の少女が、その場に突然降り立っていた。
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